2006年10月30日月曜日

『KYOTO PEOPLE 2006 VOL.2』雑誌:LEAF 2006年10月

KYOTO PEOPLE 2006 VOL.2

京都府知事 山田啓二
語り継ぎたい・・・
絆・文化・DNA



~京都人のアイデンティティとは~

京都府内には”不思議な絆”で結ばれる人が大勢いる。古典芸能を伝えてきた人々や、歴史ある産業を支えてきた人々、運命に導かれるように関わりを持ち伝承する伝統の技など、語り継ぐに相応しい存在がある。今後も残していきたい”京都の文化”に、京都府知事・山田啓二が迫る2回目は、京の匠の技をアレンジして世界へ発信しようと試みる、島田昭彦さんと語りあった日のこと…。

違う視点で面白いモノを創る世界発信へ”京モノ”プロデュース

雨が降る中で山鉾巡行が終わり、祇園祭も終盤を迎えた七月下旬。京和傘[日吉屋]を訪ねた。

上京区にある創業百余年の老舗で、野点傘、番傘など様々な和傘が並ぶ中、意外なモノを発見した。「老舗とモダンの縁結び」という考えを持つ島田さんが、世界発信を視野に入れプロデュースしたランプシェード。ジャーナリストでもある彼は、トップアスリート取材のために世界を飛び回る。ある時、世界における京都の認知度は高いが、「本当の京都のすばらしさ」が理解されていない現実を知り「伝える使命」を感じたと言う。…京都で紋章工芸を営む家に生まれた、そのDNAが突き動かすのか…

そして今では、伝統工芸をキーとして、人と人・モノとモノ・文化と文化を結びつけることをライフワークとし活躍している。

その1つが「京和傘の技術を使うランプシェード」。和傘は、伝統工芸品としてなら世界に通用すると考えるが、耐久性をなどから生活品となりづらいのは確かなこと。島田さんは、日常に使われてこそ伝統工芸の生きる道があるという考えのもと、[日吉屋]の社長、西堀さんによる和傘の匠の技を使い、さらに、[東京デザインパーティ]の照明デザイナー、長根寛さんのデザイン力を活かし、「京都発”伝統”日常アイテム」を作り出した。和傘そのものではなく、技を使った日常アイテム。またひとつ新しいモノが誕生。この新たな魅力で京の職人技をアピールできるはずだ。

京都府にも、イタリアのデザイナーと京都の工芸職人とのコラボレーションを支援する施策があり、双方の技を活かしてインテリアファブリックなどが作られる。また、私のマニフェストの中に、「伝統産業協働支援バンク」がある。技を持つ人たちの登録制度を作りプラットフォーム化する計画だ。国内外の有名デザイナーが、「京の匠の技を取り入れて帽子を作りたい」という場合や、島田さんのようなプロデューサーも簡単に工芸士などを選択できるはず。ぜひ実現させたいと思う。

京都でのサミット誘致のため制作したポスターには、京和傘の写真を掲載した。それは”1本の傘”に、京都の伝統・文化そして、おもてなしの心や思いやりを示す象徴として。京の心を反映する「京モノ」。匠の技をアレンジして新しいモノを作り上げ、世界レベルで評価されるものに仕上げる。プロデュースすること、発信することの大切さを知った。


山田啓二 YAMADA KEIJI
昭和29年生まれ。高校時代から続けているフェンシングをはじめ、ゴルフや旅行など身体を動かすことが大好き。それゆえ、何事も前向き”やる気”重視の体育会人間。京都府総務部長、副知事を経て、平成14年知事に就任。現在2期目。

今回のゲスト

株式会社クリップ 代表取締役社長 島田昭彦さん
昭和39年京都市生まれ。東山高、立教大を経て、雑誌「Number」のスポーツジャーナリストに。現在は、テレビ、ラジオ出演、雑誌連載など多方面で活躍中。アロハパゴンなどモノ作りから地域再生まで世界的に注目されるコラボプロデューサーにしてヒットの仕掛け人。目下友人の片山右京氏とエコ燃料でパリダカラリーを目指して準備中。

取材協力/
(株)日吉屋 京都市上京区寺之内通堀川東入ル百々町546 
TEL075・441・6644